導入
2023年以降、WTI原油とブレント原油の価格は著しい上昇を続け、年初来の高値を更新しています。この価格上昇の背景には、ウクライナによるロシアの石油製油所への攻撃や、イスラエルによるシリアのイラン大使館への攻撃など、地政学的な緊張の激化があります。これらの出来事は、世界的な石油供給に対する不安を煽り、価格の上昇を促しています。
ロシア製油所への攻撃
ウクライナ軍はロシアの主要な収入源である製油所に対するドローン攻撃を実施しました。これらの攻撃は、ロシアの戦力を削ぐことを目指しています。大きな物理的損害はないものの、ウクライナの戦略は戦争資金源を断つことにあります。この攻撃は、供給不安を高め、価格の上昇圧力となっています。
中東紛争の激化
中東では、イスラエルがシリアのイラン大使館を空爆し、イラン革命防衛隊の高官を含む複数の死傷者が出ました。イランの大統領はイスラエルへの報復を宣言し、地域全体の緊張が高まっています。中東は世界の石油供給の拠点であり、この地域の紛争は常に大きな影響を与えます。現在の状況は、供給の不確実性を高め、原油価格の上昇を支える要因となっています。
OPECの反応
OPECとそのパートナーであるOPECプラスは市場の安定に重要な役割を果たしています。最近の合同閣僚監視委員会のオンライン会議では、現在の生産量を維持する方針が確認され、生産量の大幅な変更は見込まれません。OPECプラス加盟国は日量220万バレルの自主的減産を続けることを決定しました。この決定は、供給面の安定性を確保し、過度な変動を抑えることを目的としています。
将来の原油価格
この市場は、供給と需要の基本的なバランスに大きく依存しています。現在の地政学的緊張とOPECプラスによる生産調整の影響を受け、一時的に90ドルに達する可能性があります。特に、中東地域の不安定化やロシアへの制裁が続く中で、供給面の不確実性が高まり、価格上昇の要因となっています。しかし、世界経済の成長見通しや新型コロナウイルスのパンデミックからの回復速度も、需要に影響を及ぼします。
